ウズベキスタン出張記(1)~食糧問題とイネ育種プロジェクト~
お盆休みの8月11日から19日まで、芦苅がウズベキスタンに出張に行って来ましたので、3回に渡って今回の出張を紹介したいと思います(By 芦苅)。
今回の出張ですが、ウズベキスタンの稲作地帯を訪問すること、ウズベキスタン政府と稲作プロジェクトを議論するのが目的です。
ウズベキスタンにはかつて世界第4位の広さを誇る湖「アラル海」など豊富な水資源がありましたが、様々な問題でアラル海はほぼ消滅し、塩が蓄積してしまいました。その塩は徐々に広がり、現在では水田で塩害問題が深刻化しています(その他、乾燥問題なども深刻です)。
ウズベキスタンには、国民食であるプロフ(炒めご飯)に代表されるように、お米を食べる文化がありますが、上記のように稲作に深刻な問題を抱えています。また、これを克服するイネの育種があまり進んでいません。
そこで、我々の「ゲノムエンジニアリング技術」がウズベキスタンのイネ品種改良に貢献できるのか、現地を訪問してその実体を把握し、ウズベキスタン政府と議論して共同プロジェクトの可能性を探る為に現地を訪問しました。
ウズベキスタンとは
ウズベキスタンは、1991年に旧ソ連から独立した中央アジアの中心的な国です。
中央アジアの国々は国名の語尾が「スタン」となっています。「スタン」は、ペルシャ語で「~の国」を意味する言葉で、ウズベキスタンはウズベキ人の国を意味しています。日本の約1.2倍の国土に、中央アジアで最も多い約3,820万人が暮らしています。
また、人口の約60%が25歳以下の若者であり、今後さらなる人口増加が見込まれる活気ある国です。しかし、それに伴う水資源の減少と人口増加は、食料問題という大きな課題を引き起こしています。
タシケントでのプロジェクト始動
名古屋からは仁川を経由し、首都タシケントへ。
タシケントには名古屋大学のウズベキスタン事務所(ウズベキスタンと日本の学術交流の拠点として活動しています)があり、所長のエルドル(ELMURODOV Eldorjon エルムロドフ エルドルジョン)さんに出迎えていただきました。
名古屋大学で法学の修士号を取得されたエルドルさんは、卒業後、在日ウズベキスタン大使館で外交官を務められた経験をお持ちです。その後、名古屋大学のウズベキスタン事務所の所長をされ、名古屋大学とウズベキスタンの架け橋として活躍されています。
エルドルさんは、大変親切で思いやりがあるだけでなく、ウズベク語、ロシア語、英語、日本語、韓国語の5ヶ国語を流暢に操り、ウズベキスタン周辺数カ国の言語にも精通されています。ウズベキスタンの閣僚とも太いパイプを持ち、その卓越したアドミニストレーションの能力はまさに「スーパー外交官」と呼ぶにふさわしい人です。
いよいよ外交がスタート
最初の訪問先は、日本大使館です。今後のプロジェクト立ち上げに向け、プロジェクトの概要を大使や書記官の方に説明するとともに、支援を要請しました。
その後、ウズベキスタン農業省のRice Science Research Instituteを訪れ、ウズベキスタンの稲作における問題点や共同研究の可能性について議論し、実際に圃場を視察しました。
続いて、Center of Genomics and Bioinformaticsでは、ウズベキスタンにおけるゲノム解析研究の紹介を受け、イネのゲノムエンジニアリングについて意見を交わしました。
どの会議も数時間にわたり、非常に前向きな議論ができました。
翌日には、ウズベキスタン農業省を訪問し、農業大臣にお会いしました。
具体的な研究内容をプレゼンし、また今後の共同プロジェクト案について協議しました。大臣はアメリカへの留学経験があり、綿花の遺伝子研究で博士号を取得された研究者であったため、我々の「ウズベキスタンのイネ品種改良」についての提案内容を深く理解してくださいました。
大臣はこのプロジェクトに大変前向きで、なんとその場でプロジェクトは承認され、関係者へ即座に開始するよう指示が出たことには驚きました。通常では考えられないほど迅速な決定で、その日のうちにMOU(「Memorandum of Understanding」基本合意書)のひな形が届くというスピード感でした。

何と、政府とミーティングを行った2時間後には、ウズベキスタン農業省のホームページで我々の訪問が公式に紹介されました(早っ)。
<ウズベキスタン出張記 (2)> へ続く